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2013. 04. 04  
『新編 みなかみ紀行』若山牧水著 池内紀編
岩波文庫


【動機】往復5時間の新幹線の車中で読めるくらいの文庫を、とピックアップ

「みなかみ紀行」や「木枯紀行」などの短歌吟詠を含む紀行文9編と、「枯野の旅」「空想と願望」の2編の詩、
最後に住まいのあった沼津の千本松の保存を訴える1文よりなる。

漂泊の歌人牧水が、いかに山を愛し酒を愛したか。

汽車や人力車を使うこともあるが、旅の中心はなんと言っても徒歩である。
脚絆に草鞋で一日に十里も二十里も歩く。
牧水だけでなく、牧水を慕う歌の結社社員も旅先の牧水に会うため、共に飲むため、何里も歩く。

読みながら、「一里は約4キロのはずだが…?」と何度もこの換算法を間違っているのではないかと思うほど、信じられない位の距離を歩いている。
日暮れて闇になった山道も、風雨のなかも、霜柱を踏みつつも、急坂を登ったり下ったりも。

その牧水でさえも、山里に住む人々が「七里、八里歩くことをまるで隣家をたずねるような気安さで歩く」ことに驚嘆している。

昔の人は、ほんとによく歩いたんですね。
「ウォーキングが趣味です」「山ガールです」というのが気恥ずかしくなる。
(後者は“ガール”も気恥ずかし…やまんばです)

私なぞ、2~3日の旅、それもアメニティの整ったホテル泊でさえ、ちょっとした大きさの荷物になるが、牧水の旅の身軽なことはどうだろう!

旅程も、その時の気分で元の予定から大きくはみだしたり変更したり、まさに“漂泊”。
身軽さゆえの漂泊である。

牧水は酒飲みで有名だが、これら紀行文を読んでその実際を知りびっくり。
朝から飲み、昼も飲み、夜中まで飲む。
そしてまた早暁に起きて、徒歩の旅を続ける。
飯がないときは酒でカロリー摂取!
若死にした(43歳)のも、むべなるかな。
二日酔いや寝不足で体調、気分が悪くなりながらも旅を続ける姿はなんだか滑稽でもある。

解説で池内紀が「牧水は水が好きだった。水への思慕に似た気持を何度となく語っている。」と書いているが、水源(みなかみ)への探求心やそれを見いだしたときの歓喜のさまは、ほんとうに牧水が「水」に対して特別な感情を持っていたことを表している。
さらに温泉も好きで、旅程はしばしばできるだけ多くの温泉地を巡ることによって立てられているし、泉質の描写も詳しい。

所用のための旅(旅ではなくて移動?)をしながらこんな本を読んでいると、牧水のような“本物の”旅をしたくてたまらなくなる。

やっと親元を離れることになった娘と別れて帰路につき、往路で読んだ続きをで読み始め、降車近くなって読了。
池内の解説が秀逸。
最後近くに次のような池内の文が…。

おそらく牧水には、移動のなかにこそ自分の本質がある、といった思いがあっただろう。
一つ所での平穏無事は死にいたるのだ。
おりにつけ、夜ごとにちがった寝床に眠るときがないと窒息する。それが病であり、異常だとすれば、健康とは何か、正常とは何であるか。
もし牧水がダーウィンの『人間の由来』を読んでいれば、手を打ってよろこんだにちがいない。
ダーウィンはそのなかで、ある種の鳥においては渡りの衝動が母性本能よりも強いことを述べている。
「母鳥は南へ向かう長い旅の出発時期を逃すよりは、巣のなかのひなを捨てる方をとる。」


私は、生まれてからずっと同じ土地に暮らしている定住民。
そこを巣立って、当分は勉学・仕事のため“漂泊”するであろう娘。

娘と別れてちょっとセンチメンタルになっていたときにこの解説文に出会って、なんだか元気になりました。

私は“渡り鳥”ではなく“留鳥”だけど、渡り鳥に強く憧れる。
別世界へ飛び立つことはできないけれど、せめて精神だけは渡り鳥のように自由になって、ひなを捨てよう!と。

*本書中の詩「空想と願望」はいいですよ!
“かくありたい”というのは宮沢賢治の『雨ニモマケズ』と同じテーマですが、私は牧水の方がずっと好きです。
ここに全文を引用したいくらい!

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2013. 03. 25  
『シズコさん』佐野洋子
新潮社

“母娘関係を考える読書”シリーズの最後(今季の?)として読んだ。

新潮社のPR誌「波」に2年間連載された24編の文章。
したがって、内容に重複が多い。
でも、その重複こそが、佐野が“根に持っていた”ことを表しているようで、「またその話ですか?」なんて文句を言わずに、「心中お察し申し上げます」スタンスで読むことができる。

佐野の本には、
「幼い頃、母と手をつなごうとして振り払われた」
「母は夭折した兄を溺愛していて、私が兄の代わりに死ねばよかったと思っているに違いない」
という話がよく出てくるが、
この『シズコさん』を読んで初めて、母との確執がどれほどのものだったのかの、詳しい事情がわかった。

また、夭折した兄への思慕はこれまでよく書いていたが、この本では、4歳で死んだ弟タダシへの思いが随所に出てくる。

母親からほとんど虐待に近い扱いを受け、18歳で家を出た洋子さん。

お母さんが呆けてホームに入り、
(洋子さんは入所させたことを「私は母を捨てた」と何度も繰り返す)
「良い娘」である妹に比べ、洋子さんはごくたまにしかホームに面会に行かないが、その10年のうちに、少しずつ母と和解していく。
お母さんの死の時期は、洋子さん自身、乳がんの闘病中でたいへんだった頃。
じっさい、お葬式や火葬場では、洋子さんは病気のため(?)朦朧としていて記憶もあやふやである。

洋子さん独特の毒舌文体で自分と身内の過去を赤裸々に書いている。
悪口、罵詈雑言吐きながらも、根っこのところでは皆を「いい人だ」と暖かく見ているところが洋子さんらしい。
母はもちろん、家庭的でなかった父、弟妹、叔母夫婦、つれあい(谷川さん)、お手伝いさん…。

ただし、テルコさん(弟嫁)と大学時代の同級生“東京の金持ちの女の子”の二人だけは心底さげすんでいるが。

呆けてしまったお母さんと最終的には和解したこと。
誰の記憶にも残っていない4歳で死んだ弟タダシのことを作家として表現したこと。

この2点によって洋子さんは『死ぬ気まんまん』の境地にまでいけたのではないかしら?

世の中にはいろいろな母娘関係がある。

私は、ずっと私の半生をかけて、母親と娘というものは特別に親密なものに違いないと思っていた。私だけなのだ、母親が嫌いなのは。しかしよく聞くと、母親とうまくいかない娘というのは、ここほれワンワンの意地悪じいさんが掘り出す汚いもののように、想像を越えて沢山いた。
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あゝ、世の中にないものはない。
ごくふつうの人が少しずつ狂人なのだ。
少しずつ狂人の人が、ふつうなのだ。
私は、自分が母親に対して気がふれているという事を、自分で始末出来なかったのだ。ずーっと、ずーっと。


以上は、洋子さんの文章からの引用だが、この部分がまさに、私がこれまでシリーズ的に読んで来た母娘関係の“総括”になっている気がする。
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2013. 03. 20  
『ニューヨークの古本屋』 常盤新平
白水社

【動機】
1月に亡くなった常盤さんの追悼。
書店に「追悼 常盤新平」として平積みされていたのをぱらぱらと立ち読み。
NY在住の義姉が「ニューヨークのことを書いている文章では常盤さんのが一番好き」と常々言っている。
よっぽど買おうかしら…と思ったが、書名に敬意を表して(?)ユーズドで安く入手。

【いもづるin】84, Charing Cross Road  Helene Hanff 

【いもづるout】アーウィン・ショーの作品

【感想など】
1978年から1999年にわたる約20年の間のニューヨーク訪問・滞在記録。
のっけから、つい最近読んだチャリング・クロス街 84番地の古書店のことや、ヘレン・ハンフの話題が出てくる。

(おととい、Kazuo Ishiguro の When We Are Orphans の訳本を読んでいた娘が、「チャリング・クロス・ロードのことが書いてある!」と叫んでいました。チャリング・クロス街は一度行かないといけないですね!)

私も行ったことのある書店はあちこちにある(だから、どの?がわかりにくい)バーンズ&ノーブルと、“世界最大の古書店”ストランド

常盤は、ストランドについて、最初は、大きすぎてげんなり…という感想を持ちあまり好みではなかったようだが、20年経つうちに、ストランド書店でちょくちょく買い物をするようになっていくのが面白い。

いやあ、ストランド書店の“ばかでかさ”、“本の数”はすごいですもんね。
私は、あの書店に通うためだけにニューヨークに1週間くらいは滞在したい!
(私の図書館通い用のトートバッグは、義姉からもらったStrand’s のです。ちょうど良い大きさで、丈夫。重宝しています。)

1978年当時は“不倫関係”だった現夫人を、常盤には妻子があったのに、girl friendとして、通訳・仕事仲間としてニューヨークに同伴し、彼女がやがて女の子を産み、次の女の子を産み…と20年が経過していくようすが読み取れる。
そして、その常盤も今はもういない…時は流れる、ですね。

こんどニューヨークに行くときは、子連れではなく、「大人の女」としてこの本で紹介されている古書店やバーに行きたいなぁ。

ただ、20年の間に、味のある古書店がいくつも消えて行っているのを常盤が嘆いているが、それからまた15年近く経っているので、この本をガイドブックにして古書店巡りをしようとしても、見つからない店も多いことだろう…。

*子連れではなく大人の女旅…が希望ですが、ニューヨークの児童書店も味わい深いですよ!
p198に
「しかし、西18丁目16番地に行ってみると、ブック・フレンズ・カフェはなかった。なんども行ったり来たりしたが、そこは子どもの本の書店になっていた。」
という記述があります。
このあたり、私も“なんども”うろうろしたことがあるけれど、18丁目18番地の有名な児童書店Books of Wonderのことじゃないかなぁ?番地違い?

Strand’s とBooks of Wonder のことはまた別記事で…。
ああー、ニューヨーク行きたいよ~!
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2013. 02. 23  
愛読しているブログ、こぶりさまの「過ぎ去りしdays」で知った本、私も読みました。
すてきな本でした。こぶりさま、ありがとう!

84, Charing Cross Road
Helene Hanff

【動機】
「過ぎ去りしdays」の記事。
これは、読まずにはおれない…と思い、注文。
センエツですが、こぶりさまと私は読書傾向(こんな本が好き…)が似ているような気がする。
…そして、それは間違っていなかった!!

【いもづるin】栃折久美子「モロッコ革の本」

【いもづるout】ジェイン・オースティンの未読小説2つ

【感想など】
本好きのHeleneと古書店員のFrankとその家族、古書店スタッフとの間でやりとりされた手紙。
なんてことはない、顧客と書店員の手紙往復なのだが(それも一つ一つは短く、頻度も少ない)、
1949年に始まり、1969年までの20年間を続けて読むと、
じんわりとした感動が湧いてくる。

*Yorkshire Puddingのレシピ、おいしそう。

*dried eggsってどんなのだろう?

*Churchill の選挙、The Beatlesのこと…時代は、私にとって「歴史上の」と「同時代の」にまたがっている!

*Heleneのユーモアのセンス! ピーナツのこと、歯の「王冠」のことなど、Frankの妻が、最後の手紙でちょっぴり嫉妬していたのも頷ける。

*Heleneの本に対する二通りの姿勢。
 ①古書・美装本・初版本に対する熱烈な愛好
 ②I houseclean my books every spring and throw out those I’m never going to read again like I throw out clothes I’m never
going to wear again.

たまっていく本の処遇は悩みの種ですね…。私は最近、できるだけ早めに売ることにしています。
また、栃折久美子の本を読んで、欧米には「工芸の粋としての本」というものがあること①を知りましたが、私にはその方面の趣味はない、
…というか、そんなことに足を突っ込んだら身上をつぶしそうで怖い。

アンソニー・ホプキンス、アン・バンクロフト主演の映画のDVDも入手しました。
今日はこれから来客、明日から2泊3日で旅行と、
映画を観る時間がとれないのですが、
旅から帰って、ゆっくり楽しむことにします!
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2013. 02. 22  
今朝、最後のステロイド剤のんで、お薬終了です!
15日間、い~ってきもお酒飲みませんでしたよ!

今朝は、またまた息子と一戦交えました。
“まだまだお子ちゃま”部分と“それなりの自我確立”部分が混じっていて、
扱いにくいことこの上なしです。
「き、き、きー」とテンションが上がりました。

朝、「面倒だけど済ませなければ」とずっと頭に引っかかっていた仕事を終えました。
とりかかってしまえば、なんのことはない、すぐできた。
わかっているんですけど…イヤなことを後回しにする怠け者の性格。

ああっ!

今朝、私が息子にかちんときたのは、
私と同じ、イヤなことを避ける「オストリッチ症候群的怠けグセ」についてでした。
息子が帰ってきたら、少し落ち着いて話してみよう。
息子の成長を期待して「今やらないと後で後悔する」と老婆心を持つのですが、
「じっくり待つ」ということが私には欠けているのかも。

『下に見る人』酒井順子
角川書店

【動機】
ユーズド書店できれいで安かった。酒井順子、最近読んでないなぁ…と。

【いもづるin】
酒井順子「負け犬の遠吠え」

【感想など】
酒井順子、角田光代あたりは私よりちょっと下の世代で、バブリーな時代に高校生、大学生だった人々。
ちびまるこちゃんの世代ですね。

酒井順子は「負け犬の遠吠え」が話題作だけど、タイトルだけで誤解されていることが多いのでは?
じつは私も、「負け犬」は扇動的なタイトルから、
「たぶん、こういうことが書いてあるのだろう」と勝手に推測していた。
ベストセラーになっていた間には読まず、文庫になって読んでみたら、
書いてある内容はほぼ推測通りだったけど、
酒井の観察眼の鋭さと、彼女の中にある他者への優しい眼差しには感心。
頭が切れる人ですね。

この「下に見る人」でも、自分のうちにある隠微な「いじめ体質」を丁寧に読み解いている。

自尊感情・自己効力感の高い人は、
自分と他人を上下関係のなかに布置したり、人をいじめたり、嫉妬したりはしません…
が、我も汝も弱きもの、ついつい人を下に見たがる…。

という当たり前のことを、彼女のこれまでの経験からおもしろく書いている。
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プロフィール

ぶるっく

Author:ぶるっく
 長女ぽんは飛び立ち、長男ばぶは羽ばたき練習中。空きの巣になっても、仕事・趣味・体力作りに励み、楽しく暮らしていきます!
 読書・音楽・ウォーキング・軽登山・水泳のことなど…日々の記録です。

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